Windows Server のフェイルオーバークラスターで提供される代表的なサービスとしてファイルサーバーがあります.
前回の記事「Windows Server Failover Cluster (WSFC) – ファイルサーバーの冗長化 (1)」では様々なエラーと解消方法について説明を行いました.
今回はそこからの続きで,正しく WSFC 化する手順と動作について解説します.
- Windows Server Failover Cluster (WSFC) に関するお話
Windows Server Failover Cluster (WSFC) – ファイルサーバーの冗長化 (2)
ファイルサーバーの冗長化の種類
Windows Server によるファイルサーバーの冗長化は2つの方法があります.
通常の WSFC を利用したアクティブ-スタンバイ方式とアクティブ-アクティブ方式の SMB スケールアウトファイルサーバーです.
アクティブ-スタンバイ方式のファイルサーバー冗長化
一般的なファイルサーバーの冗長化の方式です.アクティブ-スタンバイですので,ファイルサーバーアクセスはアクティブノードのみが処理を行います.
アクティブノードに障害が発生が発生したらスタンバイノードがアクティブノードとなり処理を引き継ぎます.
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アクティブ-アクティブ方式の SMB スケールアウトファイルサーバー
Windows Server 2012 以降で利用が可能になったアクティブ-アクティブ方式のファイルサーバーです.通常時はアクティブノードすべてが処理を受け付けます.障害が発生したら残ったアクティブノードが引き続き処理を行います.
SMB スケールアウトは最大8ノードのアクティブノードを持つことができます.
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2つの方式のうちどちらを選択すべきか
アクティブ-アクティブで利用可能であれば SMB スケールアウト方式にすべきと思えますが,利用できる機能に差がありますので,提供したいファイルサーバーの構成によって選択する必要があります.
フェイルオーバークラスター | スケールアウトファイルサーバー | |
---|---|---|
クラスター形態 | アクティブ – スタンバイ | アクティブ – アクティブ |
サポート する Windows Server | Windows Server 2003 ~ | Windows Server 2012 ~ |
SMB 透過フェイルオーバー | 〇 | 〇 |
SMB スケールアウト | 〇 | 〇 |
SMB ダイレクト | 〇 | 〇 |
SMB 暗号化 | 〇 | 〇 |
DFS 名前空間 – フォルダーターゲット | 〇 | 〇 |
DFS レプリケーション | 〇 | 〇 |
NFS | 〇 | × |
ファイルシステム | NTFS / ReFS | CSV (クラスター共有ボリューム) |
重複排除 | 〇 | × |
ファイルサーバーリソースマネージャー (Quota など) | 〇 | × |
VSS エージェント | 〇 | 〇 |
フォルダーリダイレクション | 〇 | 〇 |
ブランチキャッシュ | 〇 | × |
オフラインファイル | 〇 | 〇 |
Hyper-V | 〇 | 〇 |
SQL Server | SQL Server 2012 ~ | SQL Server 2012 ~ |
SMB スケールアウトの場合,容量制限である「クォータ」が利用できませんので,グループポリシーである程度制御はできますが,フォルダーリダイレクトや移動ユーザープロファイルの置き場にする場合は注意が必要です.
また,NFS 共有を提供することはできません.
こういった差を確認のうえ,どちらの方式でファイルサーバーサービスを提供するか決定してください.
クラスター化されたファイルサーバーを構成する
ここではアクティブ – スタンバイ方式のファイルサーバーを導入する手順を解説します.
左側の「フェイルオーバークラスターマネージャー」を展開して「クラスター」を選択,右クリックでメニューを表示して「役割の構成」をクリックします.
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「可用性ウィザード」が起動しますので「次へ」をクリックします.
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「役割の選択」で「ファイルサーバー」を選択して「次へ」をクリックします.
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ファイルサーバーの種別を選択します.ここでは「汎用ファイルサーバー」を選択して「次へ」をクリックします.
汎用ファイルサーバーは通常のファイルサーバーをフェイルオーバークラスター化するもので,スケールアウトファイルサーバーはアクティブ-アクティブな形のファイルサーバーとなります.
スケールアウトファイルサーバーは別の回で解説したいと考えています.
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ファイルサーバー情報を入力します.名前がファイルサーバー名,アドレスはファイルサーバーに付与するIPアドレスになります.
入力を終えたら「次へ」をクリックします.
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「記憶域の選択」でファイルサーバーで利用するディスクを選択して「次へ」をクリックします.
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構成する内容を確認して「次へ」をクリックします.
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正常に構成されるとこのような画面になりますので「完了」をクリックしてウィザードを終了します.
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ファイルサーバーの状態確認
「役割」に作成したサービスが表示されていることを確認してください.
また,所有者ノードがどのサーバーが持っているのかを確認しましょう.
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所有者ノードのサーバーでエクスプローラーを開くと共有ディスク(ドライブ)がマウントされていることが確認できます.
一方,所有者ノードではないサーバーでは共有ディスク(ドライブ)はマウントされていません.
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ファイルサーバーの構成
共有ディスクにフォルダーを作成,共有を行います.以降,移動ユーザープロファイルやフォルダーリダイレクトに向けた権限設定を行います.
共有の作成
WSFC 環境で SMB 共有を作成する際,いくつかの方法があります.今回はその中の一つを紹介します.
今回の手順ではまず最初に共有フォルダーとして公開したいフォルダーを作成しておきます.
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フェイルオーバークラスターマネージャーの役割よりサービスを選択,右クリックでメニューを表示して「ファイル共有の追加」をクリックします.

ファイル共有を行うにあたり幾つか選択項目が表示されます.今回は「SMB共有 – 簡易」を選択して「次へ」をクリックします.

共有の場所を指定します.
「ボリュームで選択」を選ぶと選択したボリュームに「Share」というフォルダーが作成され,その中に共有フォルダーが作成される形となります.
今回は事前にフォルダーを作成しているので「カスタムパスを入力してください」を選択して「参照」をクリックします.

事前に作成したフォルダーを選択して「フォルダーの選択」をクリックします.

元の画面に戻るので,選択したフォルダーが正しいことを確認して「次へ」をクリックします.

共有名を入力して「次へ」をクリックします.
「共有するローカルパス」と「共有するリモートパス」が想定どおりであることを確認してください.

ファイル共有時の詳細設定を行うことができます.
- アクセス許可設定に基づいた列挙を有効にする
ファイルやフォルダーにアクセス権がない場合一覧に表示させたくない場合はこのチェックを有効にします - 継続的可用性を有効にする
フェイルオーバー後もクライアントが中断されることなく継続アクセスができるようにする場合チェックを有効にします.デフォルト有効になっています - 共有のキャッシュを有効にする
オフラインキャッシュアクセスを有効にする場合はチェックを有効にします.デフォルト有効になっています - データアクセスの暗号化
SMB共有アクセスを暗号化する場合はチェックを有効にします
オプションのチェックが完了したら「次へ」をクリックします.
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設定内容を確認して「作成」をクリックします.
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作成が完了するとこのような画面になりますので「閉じる」でウィザードを終了します.

アクセス権の設定
作成した共有フォルダーの権限設定を行います.「Windows ファイルサーバー – ファイルサーバーサービスを構成する「共有の作成とアクセス権の設定」」で詳細な手順を説明していますので合わせてご覧ください.
フォルダーを作成,右クリックでメニューを表示して「プロパティ」をクリックします.
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「詳細な共有」をクリックします.
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「このフォルダーを共有する」にチェックを付けて「適用」をクリックします.
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セキュリティの詳細設定はこのように設定します.
細かな点は「Windows ファイルサーバー – ファイルサーバーサービスを構成する「共有の作成とアクセス権の設定」」を参照ください.
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下部のファイル・フォルダーに権限を継承させます.
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最終的にはこのような形になります.

ファイルサーバーへのアクセスを試みます.
ファイルサーバー名は「\\クラスターサービス名\共有名」となります.
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フェイルオーバー動作
フェイルオーバー動作について幾つかのパターンを紹介します.
クラスターの切り替え
Windows Server は定期的にアップデートやパッチが配信されますので,定期メンテナンスが欠かせません.(Windows Server に限った話ではありませんが)
フェイルオーバークラスター構成の場合,役割(サービス)を移動させてメンテナンス対象のサーバーからサービスをなくすことでサービスに影響なくメンテナンスが可能です.
現在,ファイルサーバーサービス「msfc-fs01」は「msfc01」が所有者ノードになっています.
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役割を選択,右クリックでメニューを表示して「移動」-「ノードの選択」をクリックします.
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移動したいノードを選択して「OK」をクリックします.
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役割(サービス)の移動が完了すると,所有者ノードが変更されます.
この状態では「msfc01」上でサービスは動作していませんのでメンテナンスを行ってもファイルサーバー「msfc-fs01」への影響はありません.
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このようにファイルサーバーは継続してアクセスすることができます.
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障害発生時の切り替え
今回はアクティブ機をパワーオフする形で障害を発生させます.
WSFC 環境は仮想マシンのため,1号機をパワーオフします.
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1号機に障害が発生したことを検知したら,2号機のクラスターイベントに次のようなイベントが記録されます.
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役割を確認すると所有者ノードが2号機になっていることが確認できます.
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ファイルサーバーアクセスが継続してできることを確認しましょう.
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以上,ファイルサーバーのクラスター化の解説でした.
次回は SMB スケールアウトファイルサーバーについて解説します.
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