Windows Server の DHCP サービスで利用可能な冗長化方式の「負荷分散モード」について説明します.
- DHCP に関するお話
- Windows Server – DHCP サービス (DHCP とは)
- Windows Server – DHCP サービス (DHCP の冗長方式)
- Windows Server – DHCP サービス (DHCP の冗長化方式 – ホットスタンバイモード)
- Windows Server – DHCP サービス (DHCP の冗長化方式 – 負荷分散モード)
- Windows Server – DHCP サービスの導入と構成
- Windows Server – DHCP フェイルオーバーの構成 (ホットスタンバイモード)
- Windows Server – DHCP フェイルオーバーの構成 (負荷分散モード)
- Windows Server – DHCP サーバーの管理 (1)
- Windows Server – DHCP サーバーの管理 (2)
通常時の動作
負荷分散モードの状態遷移のイメージは以下のようになります.
負荷分散モードの説明の前提構成
以下負荷分散タンバイモードを説明しますが,その際の DHCP サービスの構成の前提はこのようになっています.
IP アドレスプールが 100 個,分散比率を 50% / 50% としています.
初回の DHCP 要求 (正常動作時)
正常動作時のクライアントからの DHCP リクエストが行われた場合,DHCP Discover に対する OFFER の応答はどちらかのサーバーがが行います.どちらのサーバーが行うのかは負荷分散の割合によって Client Identifer などを元に応答するサーバーが決められています.
MAC Addr A からのリクエストは1台目,Mac Addr B からのリクエストは2台目.のように動作し,2台共応答する訳ではありません.
初回の IP アドレスの配布の際,リース期限は「MCLT」に設定された時間がリース上限として返答されます.先の図で記載しているとおり,MCLT は 5分 としているため,Lease Time は 300s として応答が返ります.
DHCP Ack の際,DHCP サーバー2台の間ではリース情報を共有されます.
偏った処理になった場合の対策
Client Identifer (MAC アドレス) を元に受け持つサーバーが決定されると説明をしましたが,偏りが発生し,片方のプールが枯渇する場合は次の図ようにパートナーに空きアドレスを要求して払い出す動作をします.
したがって,偏りが原因でプールが枯渇してアドレスが払い出せなくことはありません.
リース更新の要求 (正常動作時)
リース更新時の動作は「Windows Server – DHCP サービス (DHCP の冗長化方式 – ホットスタンバイモード)」の「リース更新の要求 (正常動作時)」と同様の動作となります.
障害時の動作 (障害発生時)
DHCP サーバーに障害が発生した際の動作について説明します.
以下の図の赤枠で囲んでいる範囲,障害が発生したあと MCLT 時間に到達する間の動作についての説明になります.
新規の端末からの DHCP 要求時の動作
ローカル(1台目)障害が発生した場合で説明します.
ローカルが処理すべきと判断された端末はこの期間中パートナーは DISCOVER への応答は返しません.
パートナーが処理すべきと判断された端末はパートナーが DISCOVER の応答を返し,アドレス配布までの一連の処理を完了できます.
つまり,この期間中ローカルが処理すべきと判断されている端末群への新規のアドレス配布は停止している状態になります.
パートナーが処理すべきと判断されている端末には変わらずに DHCP サービスは提供されます.
障害時の動作および障害復旧中の動作 (MCLT時経過,パートナーが制御)
ローカル(1台目) サーバー障害発生,MCLT 期間を経過した後および,ローカルサーバー復旧中の動作について説明します.
以下の図の赤枠で囲んでいる範囲の動作についての説明になります.
新規のアドレス払い出し
MCLT 経過後するとパートナー(2台目)がすべての処理を行うようになります.
ローカル(1台目)が処理すべきと判断された端末の DHCP DISCOVER の応答もパートナーが行います.
つまり,100% のアドレス範囲をパートナーが処理する状態となります.
元々ローカルサーバーから払い出されていた端末の場合のリース延長 (1回目)
元々ローカル(1台目)から払い出されていた端末は T1 時間経過後 DHCP Request をローカルサーバー宛てに送信しますが,応答は返せません.
T2 時間経過後の DHCP DISCOVER でパートナーサーバー宛てにリクエストが届きますので,パートナーがリース延長を行います.
この際,延長されたリース時間は MCLT の時間になります.
元々ローカルサーバーから払い出されていた端末の場合のリース延長 (2回目以降)
パートナーが処理するようになった以降の T1 時間経過後の DHCP REQUEST はパートナー宛てに行われますが,パートナーは DHCP REQUEST には応答は返しません.
T2 時間経過後の DHCP DISCOVER に切り替わった際にパートナーは応答を返してリースの再更新が行われます.
障害復旧後の動作
ローカル (1台目) サーバー復旧後の動作について説明します.
以下の図の赤枠で囲んでいる範囲の動作についての説明になります.
ローカルが払い出すべき端末のリース更新
ローカル (1台目) が払い出すべきと判断されている端末がリース延長でパートナーに切り替わっていた端末の場合,ローカルが復旧しても DHCP REQUEST はパートナーに送られます.
ですが,パートナーは DHCP REQUEST には応答せず,T2 時間で応答する旨を先に説明していますが,T2 時間経過後の DHCP DISCOVER にはローカルが応答を返すように再度変わります.
この際,ローカルに切り戻った1回目のリース更新は MCLT の値がリース延長の時間となります.
2回目以降は通常の時間で再延長されます.
以上でDHCP 負荷分散モードの説明を終わります.
次回はこれまでの説明を踏まえて,DHCP サービスの導入について解説を行います.
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